
『おえかき草紙』へようこそ!
管理人の もげら です。
油絵を描いていて、次のような経験をしたことはありませんか?

絵に亀裂入ったことあるで!

保管していた二科の絵が数年後に
ベロッとはがれた経験(剥離)があります。
油絵のヒビ割れ(クラック)や剥離は、偶然できてしまうものではなく実は 原因 があるんです。
そしてその多くは、 描きかた と 乾燥の仕組み を理解することで防ぐことができるので、安心してください◎
そこで今回は、
・・・についてまとめていきます。
なぜ油絵はヒビ割れるのか?【原因解説】

まずは油絵の原理から見ていきます。
油絵は「蒸発」で乾くわけではない
油絵具は水彩絵具やアクリル絵具のように、水分が蒸発して乾くのではありません。
乾性油が空気中の酸素と結合することで固まり、乾燥します。

難しく言うと
乾性油が酸化重合して顔料を固定する・・・
それが油絵です。

・・・なんのこっちゃ?!
この乾燥の過程は
という特徴があります。

完全乾燥するには
半年以上かかることもあるとか
言ってたな・・・
ヒビ割れ(クラック)の正体は「乾燥速度の差」
ヒビ割れの主な原因は、
絵具の層ごとの乾燥速度の違いによる収縮差です。

どゆこと???
↑この状態で絵具の内部(下の層)が動くと、硬くなった表面(上の層)が引っ張られます。
これが クラックの基本構造 です。
ファットオーバーリーンとは?【ヒビ割れ防止の基本原則】
ヒビ割れ防止の基本原則が
ファットオーバーリーン(Fat over Lean)です。

Fat|脂肪の多い
Lean|脂肪の少ない
Over|上に
・・・つまりなんや?
油の少ないものの上に油の多いものを・・・といったところですが、これを簡単に言うと次の通りです↓
下の層は乾性油少なめで、上の層ほど乾性油を多くしましょう!

詳しく言うと・・・↓
■ 最初の層は揮発性油(テレピン・ペトロール)で乾性油(油分)を薄めたりする
■ 絵具の層を重ねるごとに乾性油(リンシードオイルなど)を少しずつ増やしていく
これが
ファットオーバーリーン(上層ほど油分を多くする原則)です。
なぜ油分が関係するの?
油分の調整がなぜ必要なのか、疑問に思いますよね。

油分の量によって
乾燥の仕方は次のように変わります↓

つまり~???
上に乾燥が早い層
下に乾燥が遅い層
・・・という順番にすると、
- 上の層が先にギュッと固まる
・
・
・ - 下の層が少しずつ固まっていく時にカタチが動き変わる
・
・
・ - 下の層が縮むことで先に固まった上の層を引っ張る
・
・
・ - 上の層は引っ張られることでパキッと亀裂・ヒビが入る
という現象が起きやすくなるんです。
油絵のヒビ割れを防ぐ具体的な描きかた5選
さて。
ココからが実践編です。

描く時の参考になれば嬉しいです。
以下5つの描きかたについて紹介します↓
- 下層は乾性油を少なめにする
- 重ねるごとに油分を増やす
- 厚塗りの上に速乾層を置かない
- 絵具が未乾燥の状態でワニスをかけない
- 急激な温度・湿度変化を避ける
① 下層は乾性油を少なめにする
同じことの繰り返しになりますが、大事なことなのでもう一度・・・
最初の層は、
で描きましょう◎

1層目は絵具自体に
含まれている乾性油で十分で、
あえて乾性油を使わなくても大丈夫です。
② 重ねるごとに油分を増やす
上層にいく程、乾性油の割合を増やしていきます。

乾性油ってなんやっけ?
具体的には、
などを少しずつ増やします。
急激に増やすのはNGで、上の層にいく程、徐々に徐々に・・・がポイントです。
③ 厚塗りの上に速乾層を置かない
油絵具を厚塗りすると、内部まで乾燥するにはかなりの時間がかかります。
厚塗りした上に
を重ねると、上層だけが早く絵具が固まってしまい、後々上の層が割れてしまうことになりかねません。
④ 絵具が未乾燥の状態でワニス(タブロー)をかけない
絵具が完全乾燥する前にタブローを塗ると、
ため、ヒビ割れの原因になります。

タブローは
いわゆる仕上げのニスのことやったな。
タブローは一般的に半年以上乾燥させた絵の上にかけます。
ただし、絵具の表面が乾燥した状態(指触乾燥)で使えるタイプのタブローもあります。
指触乾燥で使えるタイプは、完全乾燥後に使うものより保護能力は低いです。
タブローは、ワニスについてまとめた記事の【タブローについて】の項目で詳しく紹介しています↓
⑤ 急激な温度・湿度変化を避ける
油絵は温度・湿度の影響を受けるデリケートな部分もあります。
以上の3つの環境は、乾燥ムラの原因になり、思わぬ画面上のトラブルを招きます。

カビが生えたりする可能性も・・・

環境整えるの大事やな・・・!
すでに油絵がヒビ割れてしまった場合の対処法
状態によって対応が異なります。
専門的な技術や知識が必要なケースもあるので、できる範囲で対応していきましょう。
軽度の細かいクラック
ちょっとしたヒビ割れなら、見た目がちょっとアレなだけで特に問題ないケースも多いです。
なので、気にしないのもひとつの手だと思います。

ヒビがいい感じの味になるかも。
とはいうものの、どうしても気になってしまうこともあると思います。

オイラは意外と気にする質やで!
その場合は、絵具の表面が乾燥(指触乾燥)したら、ワニスのルツーセを何も混ぜずに薄く1層かけましょう。
テカリも出ますが、細かいヒビであれば気にならなくなります。

厚塗りはせず、
薄~く薄~く・・・です。
深い亀裂・剥離がある場合
深い亀裂や剥離がある場合は、悲しいですが諦めましょう・・・
どうしても諦めることができない場合は、専門の修復家さんに相談するのがおすすめです。
ただし、ある程度のお金がかかることも想定しておきましょう。
自己補修でさらに悪化させてしまうこともあるので、知識や技術がない場合は無理に触らないほうが安全です。
深い亀裂・剥離をなるべく起こさないよう、予防と管理を徹底する姿勢が最も確実です。

気をつけよ。
まとめ|ヒビ割れは理論を知れば防げる
油絵のヒビ割れは、まずそうならないように予防する姿勢が一番重要です。
この3つで大きく防ぐことが可能です◎
油絵は歴史がある分、さまざまな理論や対応策がきちんと確立されているので、その点においては最も安心な画材と言えます。
構造を理解すれば、より安心して重ね塗りや厚塗りを楽しめると思います。
一緒に油絵を楽しみましょう◎

最後までお読みいただき
ありがとうございました!

