
『おえかき草紙』へようこそ!
管理人の もげら です。
このテーマは全4回でお届けします。
今回の第2回では、「油絵の値段をどう決めればいいの?」という疑問に対して、よくある3つの方法を紹介します◎
「値段って、自分で決めていいの?」
展示や販売を考えた時、こうした疑問や不安にぶつかったこと、ありませんか?

管理人はありますよ・・・!
とある公募団体展で、F6号(A3サイズくらいです)の絵が入選し、展示されていた時のことです。
「この絵がほしいです。おいくらですか?」とお声がけいただいたのです。
運営サイドから連絡があったので、何事かと思ったら、まさかの出来事でした。
公募団体展は、販売目的の展示会ではないからです。
「絵を売る」という考えが頭になかった当時の管理人には、あまりにも想定外の出来事でした。
自分の絵を気に入ってくれる方に出会えたことがかなり嬉しかったのですが、若干パニック状態にもなりました。
当時はまだ、画商さんとの取引もなく、自分に号単価はありませんでした。
どうしていいかわからず、先輩作家に相談して、価格を決めてもらいました。
というわけで今回は、初心者が迷いやすい価格設定の3つのパターンと、気をつけておきたい価格の落とし穴について解説します◎
よくある価格の決めかた3パターン

絵の価格をどう決めるか――
実際に決める段になると、「うわ、なんだか難しい・・・」と躊躇してしまう方もいるはずです。
そこで、絵を描く人がよく選ぶ3つの価格設定方法を紹介します。
① 自分で決める(自己判断)
いちばん自由だけど、いちばん迷ってしまいがちなパターンです。
・・・など、人によって判断基準はさまざまです。

自由って実は厄介やな。

正解という基準がないので
悩んでしまうこともあるかと。
メリット
自分の描いた絵には、愛着がわくと思います。
愛着がわくからこそ、自分が納得できる価格を設定できることが、大きなメリットだと思います。
デメリット
絵を買う人は、好みは勿論、作品のクオリティに主に目を向けます。
特にファンがひとりもついていない無名の作家の内は、どれだけ時間をかけて描いたとか、細かい作品コンセプトも絵自体に説得力がない限り、スルーされてしまう可能性が高いです。

興味持てんと
まあしゃーないか・・・
自己評価と他者評価をしっかり分けて考えないと、作品と価格が釣り合わない作家という印象がついてしまうので、要注意です。
② 周囲に合わせる(相場を見る)
まわりの作家や展示の価格帯に合わせる方法です。
このような「相場感」で決める人もいます。

リサーチってやつ?
メリット
他の作家さんと足並みを揃えることは、展示会場でひとりだけ浮いている状態を避けられます。

浮くって悪いことなんか?
例えば、100円ショップにポーチを買いに行ったとして・・・
10万円のポーチがひとつそこに並んでいたら、まず買わないと思います。
逆に、10万、20万、100万円の商品が当たり前の高級ブランド品を扱うお店で、100円の商品がポツンとあったら・・・

「もっと値段あげなさいよ!」という
声をあげる方も実際にいます。
想像してみると、何となくイメージできるかなと思います。
デメリット
他の作家さんを参考にするとして、その作家さんの価格設定にズレがあり、結局自分もズレてしまう・・・なんてこともあると思います。
何を参考にするか、よく考える必要があります。
極端な例をあげてみます。
「自分はゴッホ風な絵を描くから、ゴッホ作品のオークション落札価を参考にして、自分はまだ無名ってところを考慮すると・・・号1億円くらいかな」
このように、参考にする所を誤ると、ハチャメチャな価格設定になってしまいますので、気を付けましょう。

無名の作家に号1億・・・
だれも買いません。
③ ギャラリーや画商にお任せ!

信頼できるギャラリーや画商に価格設定を任せる方法です。
管理人が「号2.5万円」と設定された時も、百貨店の展示を扱う画商さんからの提示でした。
プロの視点で「この場所・この客層ならこの価格」と考えてくれるのは大変心強く、安心感があります。
メリット

自分の絵に適正価格を
つけてもらえるんやな。
デメリット
冒頭に述べた「価格に見合った作品を描け」という話に戻りますが、初めて絵に価格を付ける時に、「なるほど、この価格だったらこのくらいのクオリティだね!」なんて、正直わからないと思います。

少なくとも
管理人にはわかりませんでした。
画商さんに号価格の判断をお任せする場合は、何故、自分の絵がその価格なのか、理由を聞くことをおすすめします。
最初から何でもわかる人なんていませんから、わからないことはその場でスッキリさせましょう。
後からゴタゴタなるほうが、みんなで困ってしまいます。

管理人の場合、
写実表現であったこと、
作品のクオリティ、
その画商さんが抱える客層によって
価格が決まりました。

言語化って大事やもんな。
ありがちな失敗と注意点
価格設定をしてしばらく経った頃に、「・・・なんか間違えたかも・・・」と思う方もいると思います。
ここでは、よくあるやりがちミスを紹介します。
思い当たる節がある人も、これから価格設定をする人も、チェックしてみてください◎
「高すぎた!」「安すぎた・・・」の実例
展示後のモヤモヤあるあるです。
値段が高すぎた場合のモヤモヤは、わかりやすいですね。
「売れなかった・・・」という結果が、結論になるからです。
激安価格で即完売した時のモヤモヤ・・・これが厄介です。
「売れたのになんで?」と思いますよね。

オイラは激安で販売するで。
とめたって無駄やで!
このモヤモヤは・・・
材料費・額装・搬送費など、絵にかかる実費を差し引いたあとに残った利益がわかった時に発生しがちです。
価格を極端に低く設定すると、「差し引きゼロじゃん!」となりがちです。

ゼロならまだいいですけど
下手すりゃマイナスだって
あり得るわけで・・・
売上げから必要経費(材料費など)を引いた金額を、制作にかかった時間で割れば、時給がわかります。

えーと、オイラの時給は・・・
時給5円・・・?!
作品を世に出すという経験は尊いですが、価格設定をあまりにも下げすぎると、時間も労力も自己犠牲になりかねません。
「赤字でも売れたほうが嬉しい!」という気持ちもわかります。
ただ、仕事として絵を描き続けるためには、ちゃんと利益が出る価格にも目を向けていく必要があります◎
「売れなかった/信頼を失った」などのリスク
価格のブレや迷いは、周囲からの信頼感にも影響することがあります。
例えば、同じ絵が、ある展示では「号1万円」、別の展示では「号5万円」、はたまた違う展示で「号3,000円」で売られていたとすると・・・
このようなモヤモヤが発生するでしょう。
ギャラリーや画商さんに価格を決めてもらうのは、作家にとって安心材料になる一方で、「任せきり」にしてしまうと、自分という作家像がぼやけてしまうことに繋がります。
というのは、価格には、その作家が、どんな価値観で、どこを目指しているか・・・という意味も込められているためです。
だからこそ、納得した上での価格設定が、周囲の信頼にも繋がるわけです。

最終的には『自分のこと』なので
自分の意志がしっかりあるほうが
好印象になるんです。
もちろん、キャリアの中で価格が変わっていくのは自然なことです。
でもその変化にも、理由や意図が伴っていれば、ちゃんと伝わります。
信頼される作家であるために、価格の一貫性や説明できる姿勢は、大切な要素です。
「どう思われるか」より、「どう伝えるか」を意識しておきましょう◎
価格は譲り合いじゃない|席は自分で取りに行くもの
号単価は、継続して売れるようになったら、少しずつ上げていくことができます。
焦る必要はありませんが、結果を出せば、自然と価格も変わっていきます。
一方で、こんな声もよく聞きます。
「ベテラン作家は、もっと高額帯に移動して、新人が売りやすい価格帯を空けるべきでは?」

いやいやいや・・・
ちょっと待ってください。
仕事として絵を販売するのであれば、
よその作家さんに遠慮して、自分の価格を変える必要はありません。

新しくできた店が
隣の昔からある店に
「ウチより高く品物売ってな!」
なんて言わんもんな。
そもそも、安いから売れるというほど、アートの世界は単純ではありません。
ベテランでも新人でも、今空いている椅子は、取りに行くべきだと管理人は考えています。
そして、その席が自分に合っていると思ったら、気のすむまで居座っていても構わないんです。
もちろん、価格設定だけを綿密に考えても売れるわけではありません。
最終的に絵を売りたいなら、やるべきことはシンプルです。

自分の絵をもっと良くしていくこと。
ただそれだけです。
他の作家さんの事情を思いやるよりも、まずは、絵のクオリティを上げること。
それが、売約をいただくための一番確実な方法です◎
自分が納得できていないと描き続けられなくなる

価格設定で失敗すると、「なんのために描いてるんだろう・・・」と筆が止まってしまうこともあり得ます。
最初は「売れたら嬉しい!」という気持ちだけで動けても、時間が経つにつれて、自分が納得していない価格で売れたことが、モヤモヤとして残ることもあるんです。
管理人の場合、号2.5万の作品が初めて売れた時、「この値段で買ってもらって本当にいいの?!」と、嬉しい反面、何故か申し訳ないような気持ちにもなりました。

売れた後にくる
モヤモヤは何なのでしょうね・・・

アーティストブルー?!

売れた後にうまれる
作家としてのこれからにたいする
責任感もありました。
その経験から思ったことは、「売れたか/売れなかったか」だけではなく、「この値段で売ることに、自分が納得できてるか?」を軸にすることの必要性です。
他人の評価や相場も大事だけど、最終的に絵を描くのも、その絵を売りに出すのも自分自身です。
価格は、技術だけでなく、自分の気持ちと向き合う指標でもあります。
描き続けるのであれば、価格への納得感は確実に持っておくべきだと思います◎
まとめ|選びかたは意図を持って自由に
絵の価格に「これが正解!」というルールはありません。
だからこそ、どんな方法で決めるにせよ、「自分で納得できるかどうか」が最も大切な判断基準です。
「売れた」「売れない」だけではなく、その価格に自分が納得できてるか・・・
それが、描き続けるためのモチベーションにも繋がりますので、価格については自分でもよく考えてみましょう。
次回は、さらに深掘り!
「納得できる価格」を見つけるために、管理人が考えたことをお届けします◎

最後までお読みいただき
ありがとうございました!

